2020-05-15

山東出張の任務~中国事業撤退に伴う従業員解雇

 前回は山東省への旅日記のような感じの記事でしたが、本来の目的は出張です。業務内容ですが、中国法人の撤退のお手伝いです。場所は山東省内にあるとある日系の食品加工企業。従業員数は約25人。本来であれば会社清算をするということの説明のために、投資者である日本本社から代表の方が来られて、従業員に対する説明を行いたいということでしたが、コロナの影響もあり、いつ中国にやってこれるかを見通すことができず、やむなくビデオ会議で従業員に説明するということになりました。私の役割はその立ち合いと、立ち合いだけならだれでもできるのですが、その後の従業員との間の労働契約解除の折衝です。

 現地の代表の方によると、会社も10年以上やってきており、非常にアットホームな感じで運営してきたので、撤退となるとまずは寂しいという感情が起こるだろうとのことでした。しかしながら、もらうべきものはもらわないといけないということで、そんな感傷的な気持ちのすぐ後に、自分はいったいどれだけもらえるかに関心が移るはずというのがその方と私との間の共通認識でした。

 給料も決して高くない会社ですので、比較的あっさり行くのではないかというのが日本側の予想でした。現地代表の方からは、以前リストラを行ったことがあり、その時は結構荒れたらしいのですが、今回は撤退なので全員が対象者でもあり、そもそも会社自体がなくなるので、リストラの時のようには騒ぐことはないだろうという予想でした。

 本社の方から事業撤退に関する説明を行いました。従業員は落ち着いてその話を聞き、感傷的な雰囲気になったところで、そのバトンを受ける形で私の方から労働契約解除及びそれに伴う経済補償金の支払いに関して説明を開始。よく日本の記事なんかで目にするのが、従業員が暴れだして大騒ぎになるとか、責任者が監禁されて身動きが取れなくなるとか、というのがありますが、ここは工場といっても規模が25人くらいで、女性の割合も高く、そのような恐怖を感じるような場面はありませんでした。ひょっとして全員マスクをして話していたので、勝手にマスクをしている私のことを相当な怖め手と勘違いしていたかもしれないですね。マスクも時には便利です。

 さて、労働契約解除協議書についてですが、さすがにその場でサインする人はなかなかおらず、一度持ち帰ってというのが良くあるパターン。経済補償金の支払いは事務的な段取りもあるので翌月になる旨を説明したのだが、サインさせるなら今すぐ金を払えと騒ぎだす人が。面倒な人が出てきたなあ。あまりにも騒ぐので私もカチンと来ました。そしてその1人が騒いだことにより他の人も同調するような感じで騒ぎ始めました。いくら説明しても理解しようとしないようでしたが、中には理解できる人もおり、ほどほどにしてその場では説明会を打ち切りました。しかし後から現地代表の方に話を聞くと、その騒いだ人は「騒ぐのが好きなだけで実は一番単純な人、間違いなくすぐサインするよ」ということで、確かに翌日にはサインしていました。だったら騒ぐなよ!

 こういうことになった時に、あまり気にしていなかったことをこれが最後の機会ということで従業員が申し出てきます。それがはねつけてもいいような内容のものあれば、その申し出を受けてあげないといけないこともあります。はねつけたものとしては、一回離職して再雇用で今の会社にいるのだが、最初に働いていた期間分も経済補償金計算に組み入れて欲しいというのがあり、これは論外なのではねつけ。そして今回及び最近処理した別の会社でもあったのですが、社会保険料の納付漏れがあり、何とかならないかという申し出がありました。これは払ってあげないといけないものですので、翌日には追加納付できるか否か、その場合どのように納付するかを確認することで解決。最後の段階で言ってくる気持ちもわかりますが、従業員のほうも気づいていたのなら最初の段階で言ってくれればいいのにね。

 結局翌日には全員労働契約解除協議書にサイン、今回の任務は無事終了とあいなったわけであります。今後は事務処理がメインとなりますが、あと1-2回くらいは現地に行くかもしれません。現地の代表の方もとても感じの良い方なので、またお会いしてゆっくりと話したいですね。

 今回の仕事、私が現地にいるので日本側もビデオ会議での説明で進めるという割り切りができたのかと思うと、出入国が面倒になった時期に上海に残っておいてよかったなあと思いました。今まで駐在員が対応していた業務でありながら、駐在員が戻っていない中で現地社員で業務を回し、それなりに回せているところだと駐在員を減らそうという動きが出てくるかもしれません。しかし、現地で回しきれない会社もあるでしょうし、また今まで日本から出張で対応していた業務で、出張できないがためにうまく回せていない業務もあるかもしれません。そういうときに、現地にいる誰かに任せるとまで言わなくともチェックしてもらいたいというニーズはあるのではないかと思いました。

 おしまい。

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