2016-03-25

日本の中小企業の中国企業アレルギー

 先日中国企業によるクロスボーダーM&Aに関する勉強会に参加する機会がありました。レナウン、本間ゴルフや三洋電機という案件を思い起こさせてくれました。あとゲーム会社のSNKについては事例紹介で取り上げていました。さて、この勉強会であらためて思ったのは、日本へのM&A案件が極めて少ないという事実です。少ない理由として、中国から見て日本への投資はワノブゼムに過ぎない、日本企業の中国企業に対するアレルギーが挙げられていました。私のところにも時々話が来ますが、中国企業による日本企業へのM&A、あるいは提携話の場合、日本企業側のアレルギーがものすごく強いというのは確かに感じます。大企業の場合はビジネスとして成り立つか否かという考え方で話を聞く姿勢を持ってくれるのですが、中小企業はとにかく中国企業アレルギーが強く、聞く耳すら持たないケースが多いです。お客さんとしてはおいしい相手ですが、入って来られるのは嫌なのです。欧米企業が相手だと問題のない案件でも、中国企業が相手となると「どうしてそんな売国奴みたいなことをするのか」と言われるケースもあるようです。でもまあ、日本であれだけ中国のマイナスイメージを植え付けるような報道ばかり目にしたり耳にしたりするとその気持ちも分からなくもありません。中国という国の最近のふるまいも確かに問題があるとは思いますし。

 さて、そんな中国企業による外国企業に対するM&A、統計的にはどうなのかを見ていきましょう。

 下のグラフ、四半期ごとのM&Aの金額なのですが、昨年後半あたりから急激に増加していることが分かります。

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 どんな業種に対して投資しているかを見ていきましょう。工業、小売業、金融業の順で、この3つの業種で半分以上を占めています。

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 相手国を見てみましょう。日本向けは極めて少ないと冒頭に書きましたが、実際に取引金額でみても欧米向の合計が407億米ドルで、全体の約4割、欧州向けは前年比60.1%増加、アメリカ向けは49.2%も増加してます。

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 日中間で行われているM&Aで、ついこのあいだ美的集団による東芝家電部門の買収以外で近年規模の大きなもの目立つものはありません(シャープの相手の鴻海は台湾企業ね)。クロスボーダーのM&Aといえば証券会社を思いつくと思うのですが、単純な国内案件よりもクロスボーダー案件はなにかと煩雑なこともあり、フィーが非常に高いようです。そのフィーから逆算するとものすごい金額の案件でないと成り立たないのですが、現実問題としてそんな大きな案件はそうそう転がっていません。さすがに依然と比べて報酬水準は下げているようですが。証券会社が手を出さないような案件となるとM&Aを専門にやっている会社や、独立系のコンサルティング会社が手がけており(うちもこの位置づけになるかと思います)、どうしても案件規模が小さいので新聞記事になるようなものはなかなかないのが現状です。

 さて、今までは中国から日本を含む海外向けについてでしたが、日本から中国への投資はあるのかどうかというと、これもないことはありません。案件として成立しなかったものの手がけてきた案件の経験から見ますと、やはり日本から中国向けとなるとスピード感の部分でどうしてもハンディキャップがあります。別にこれは日本企業の意思決定が遅いというわけではなくて(もちろんその要素が全くないわけではないですが)、日本企業による投資は外資プロジェクトなので手続き面で中国国内企業による投資と比べて時間的にどうしても費やさざるを得ないこと、それと、中国企業の意思決定があまりにも速すぎるのです。初めて会ってから1か月以内に投資資金を振り込んだ例もあり、そんな時間で一体相手の会社の何をどのように調べ、理解したのかが疑わしいのですが、よそが投資しているからうちも投資しようというノリで投資しているところがあるのです。こんな会社たちを相手にスピード感で立ち打つするのはまず不可能なので、外国企業による投資であるため時間がかかることを理解してくれるところ、あるいは外国企業にぜひ統治してほしいと思っているところ、投資してくれる先を探しているがなかなか話がまとまっていないところ、こういった会社でないとなかなか難しいというのが実感です。

 中国から日本であれ、日本から中国であれ、いずれも国を跨るという点ですでに話が難しいうえに、話を進めづらくさせる要素もあり、なかなか簡単ではありません。手元に何件かそんな話がありますが、そもそもそんなにしょっちゅうある話でもなく、しかしながら、せっかくいただいたお話、ぜひ何とかしてまとめ上げたいものです。

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