2020-08-05

生産拠点の国内回帰支援について【中国からの撤退】

供給網の国内回帰を支援ということで、日本政府は2020年度補正予算に生産拠点の国内回帰を促す補助金として2200億円を用意した、という報道が5月ごろにありました。その後どうなっているかなあと思って検索したらこんなのがありました。

経済産業省は7月17日、生産拠点の国内回帰や多元化を図るため、第1弾として87件の事業が補助金約700億円を受けたと発表した。同補助金は、日系企業が生産拠点を中国から日本への国内回帰や東南アジア諸国への移転を支援することを目的として設けられた。

そして、「87件のうち57件が国内投資で補助対象となった。残りの30件が東南アジア諸国への生産拠点の移転を計画している」とのこと。

これに関して、中国語媒体でも時々見かける機会があって、日本企業が中国から撤退するからうんぬんかんぬん。知り合いの中国人にも聞かれたですが、そもそも中国にとってそんなに大変なことなのだろうか。なぜならば、中国から生産地を他の場所に替える、撤退するというのは、中国にいて続けても儲からないからというのが大前提としてあるはず。工場系でいうと、生産コストが上がったので、東南アジアに生産を移転しようというのがよく聞く話ですが、これって中国市場を捨てるということとイコールではないですよね。単に生産地が変わるだけの話。中国国内で販売することを視野に入れて、現地生産現地販売したほうがリーズナブルということであれば撤退しないでしょうし。要するに、繰り返しになりますが、撤退するのは儲からない(あるいは今後儲かっていかなさそう)というのが一番の理由であるはずで、そういう企業を無理やり中国に残すことって中国にとってもどこまで意味があるのか、と考えると、中国もそこまで騒ぐ必要はないと思うのです。工場系以外、つまり販売会社系やサービス業系でも同じで、なかなか市場を開拓できず、今後の会社としての成長が見込めないということであれば撤退するのもしょうがないない話でなのではないかと。

今年に関しては、コロナの影響もあって、従来良かったところでも今までのようではなくなったというところもあれば、従来からよくなかったけど、今度の今度こそ本当にダメというところもあるのではないかと思います。撤退するときに一番厄介なのは従業員の処遇ですが、今年に限ってはコロナの関係もあって、決して面白くないとはいえ従業員からの理解も得やすいのではないかと思います。コロナで騒ぎ始めたころに多くの中国企業が減給やリストラをする中で、一部日系企業で撤退を決めたところもありますが、いい判断だったと思います。上にあげた従業員の処遇もそうですが、対外的にも説明しやすいですしね。

まあ要するに、今の自社の事業がどうなっているのか。よくないのならよくないで、よくなる見込みはあるのか。よくなくても中国に現地法人があることによる業績への派生効果はあるのか。どっちでもなさそうであれば踏ん切りをつけるいい機会なのではないかと。ただ、以前実際にあった話なのですが、業歴が短い現地法人の場合、会社設立を先導した人が社内に役員としてまだ残っていて、その人がいる間は誰も撤退なんて言えないというようなケースもありました。そして、別の関連会社から少しずつ利益を移転させて財務を健全化させたいというのが希望だったのですが。その会社は今でも存続してます。財務内容はだいぶ改善したのでしょうか。

おしまい。

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