2022-09-19

米中デカップリングに伴う日本への影響

近年米中デカップリングが話題となることが多くなってきています。政治的には色々あるけど、経済はそれとはまた別の動きをしていたりしないか、ちょっとそのあたりをふと検証してみたいと思いました。ここでは中国から見た対米輸出入、対日輸出入のデータを見ていくことにします。

年次で見ていきます。まず中国の対米輸出入を見ます。

コロナが発生した2020年に落ち込んだと思っていたのですが、実のところ2019年にすでに落ち込んでます。2018年から2019年にかけての動きを見てみましょう。

2017年1月にトランプさんが大統領に就任してから特に米中の争いが増えた印象があります。その代表的なものとして関税引き上げがあります。特に、2018年3月22日に米国が「1974年通商法301条」に基づいて対中制裁措置の発動を決定して以降、両国はお互いに関税引き上げ合戦を繰り広げました。米国側の措置を見てみますと、

第一弾:2018年7月6日に発動、税率25%

第二弾:2018年8月23日に発動、税率25%

第三弾:2018年9月24日に発動、税率10%。2019年5月10日から税率25%へ引き上げ

第四弾:2019年9月1日と12月15日の二回に分けて発動、税率は最大10%

米国が関税を引き上げると中国から米国への輸出に影響が生じると思うのですが、実際に2019年の対米輸出は▲12.5%となっています。中国も対抗措置をとることで米国の対中輸出、つまり中国の対米輸入に影響が生じると思うのですが、こちらは▲20.8%となっています。輸出入総額で見ると2019年は▲14.5%という結果になりました。

しかしその後コロナが発生したとはいえ落ち着きを見せ、2020年は輸出入総額で8.3%増、そして2021年は輸出入とも大きく増加しています。2021年の動きを見ると米中デカップリングとはとても思えない増加ぶりです。

次に中国から見た対日輸出入を見ていきましょう。米国に追随する動きが多いといわれますが、実際のところどうなのか。

2021年までの動きを見ますとトレンドは米中貿易とほぼ同じですね。2019年に減少、2020年にコロナが発生したものの増加し、2021年には大きく増加。少なくとも2021年においてはデカップリングの影響は見られないようにみえますね。アメリカから見た場合、中国側はもっと輸入してくれよと思っているのでしょうが。

さて、2022年はまだ終わっていないわけですが、月次の動きを見てみましょう。

まずは中国の対米国輸出入から。まあなんとも堅調なこと。すべての月で前年比10%以上のプラスです。世の中でいうデカップリングはここからはなかなか見えづらい。米中はテーブルをはさんで喧嘩してもテーブルの下で手を握っているというのはこういうことをいうのでしょうか?

次に中国の対日本輸出入を見ていきます。2021年までのトレンドを見る限り、日本と米国はほぼ同じような流れでしたが、2022年も同じかと思いきや、だいぶん様相が違います。輸出入総額を見ますと、1月こそ前年比12.6%でしたが、その後はひたすら下落。上海がロックダウンに入った4月以降は前年比マイナスとなってしまっています。輸出と輸入を分けてみたところ、中国の対日輸出はずっと前年比プラスなのですが、対日輸入は4月以降ずっと前年比マイナスとなってしまっています。大きいとはいえ上海という一都市のロックダウンだけでここまで大きく影響するものなのだろうか?ロックダウン中でも米中はプラスなので、日中がこれってどういうことだ?なんとなくアメリカに出し抜かれているような気がしないでもない。

それでは、最後は中国の対日本、対米国の輸出入総額前年比で締めくくりたいと思います。冒頭に紹介しましたように、米中で見ますと2019年あたりにかなり落ち込んでますが、気が付くとすっかり戻っているように見えます。一方で日本は米中の2021年までのトレンドをはるかに下回り、4月以降は前年比マイナス。今後もこの傾向は続くのでしょうか。

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