2022-10-18

欧州最大レンタカー会社SixtがBYD車を10万台購入

日本経済新聞の10月17日付の記事で中国BYD、欧州で新型EV3車種 自動車本場に攻勢というのがアップされていました。中国の電気自動車が欧州市場に本格参入するという記事です。そして、中国の報道を見てみますと、これと似たような報道として、欧州のレンタカー会社がBYDより電気自動車を大量に購入するというものがありました。本日はこれについて紹介します。

100年以上の歴史を誇るレンタカー会社SixtがBYDより今後6年以内に10万台のBYD新エネルギー車を購入することを発表しました。今ある車両からの入れ替えを進めていくことで排出削減を図っていくとのことです。

第一弾として数千台を今年の冬にも引き渡しを受け、まずはドイツ、フランス、イギリス、オランダに投入していきます。車種は日系の記事にも出ているAtto3(アットスリー)です。SixtとBYDともにこの取引の金額規模について発表していませんが、Atto3が欧州市場で338,000ユーロで販売さ入れていることから、ざっと約3億ユーロの取引と推定されます。

出所:BYDオフィシャルサイト

Sixtの計画によりますと、今後8年以内に70%から90%を新エネルギー車に入れ替えるとのこと。Sixtは多くのブランドの新エネルギー車を購入しており、アウディ、オペル、テスラ、プジョーなどの欧州本土ブランドとの間で新エネルギー車購入契約を締結しましたが、今回BYDより10万台購入するということは、Sixtの保有する24万台の約4割を占めることになり、BYDは実質的にSixtの新エネルギー車のトップシェアを奪取することになるといえるでしょう。

Sixtはこれほど多くの新エネルギー車をBYDから購入することを決定した理由として、レンタカー業界における競争力の維持と自動車の入れ替え速度が原因とみられています。電気自動車の分野では、中国企業はドイツの自動車メーカーよりも早く引き渡すことができるのに対し、Sixtが注文したBMWやオペルの電気自動車は、納入までに1年以上かかることが多いようです。

BYDはここ数年「蔚来(nio)・小鵬(xiaopeng)・理想(Li auto)」を代表とする新興電気自動車勢力ほどの注目度にはなかったですが、今年3月には急速にこれら新勢力との差を広げ、月間販売台数が初めて10万台の大台を突破し、今年6月にはテスラを抜いて世界の新エネルギー車の販売台数トップとなりました。しかしながら、テスラが欧・米・アジアの3大市場全てに浸透しているのとは異なり、BYDの世界販売台数のほとんどは中国本土市場に集中しており、海外市場での存在感は極めて薄かったといえます。しかしSixtというレンタカー会社だけで10万台導入されるというのはかなりインパクトが大きいといえます。

日経新聞報道の繰り返しになりますが、BYDは唐、漢、Atto3の3車種を欧州市場に進出する第1陣の車種として選んだと発表しています。販売価格はそれぞれ7.2万ユーロ、7.2ユーロ、3.8万ユーロという価格帯です。

少し遡りますと、7月にBYDは日本市場への進出も発表しており、その時にはAtto3、BYD海豹とBYD海豚を最初の投入車種として発表しています。Atto3は来年1月に日本に正式に、海豹と海豚は2023年中に日本市場に進出する予定です。中国家電ブランドは日本ではブランド力が弱く消費者の選択肢に入りづらい状況になりますが、電気自動車は果たしてどこまでうまくいくでしょうか。車体を見る限り業務用にみえないの一般消費者が対象になるかと思うのですが、家電みたくB2Cだとちょっと厳しいような気もします。日本市場はバスから入って行ってますが、Sixtのような会社を見つけてバスと同じようにB2Bから攻めていくのか。どんな販売戦略をとるのかが注目されます。

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