2021-09-17

小売業界に激震~ローソンが一部地域で入場料を廃止

中国語で「通道費」という単語があります。直訳すると道路の通行料になりますが、これ小売業界用語でよく使われる単語です。入場料という言い方もありますが、入場料とはスーパーのような売り場に商品を置くにあたってサプライヤーがスーパーに対して支払う費用のことを言います。通道費の概念はもっと広く、入場料は通道費の一部であり、バーコード料、新店開業費、契約料等も含めたものになります。以前セミナーの資料としてまとめたことがあるのですが、ざっとこんな項目があります。スーパーにより多少異なる点もあろうかと思いますが、ざっとこんな感じです。

入場料 サプライヤーと小売業者の一回目の取引にあたり納付する必要のある固定費用
契約料 サプライヤーと小売業者の翌年度の契約を締結するときに納付する必要のある固
定費用
バーコード料 サプライヤーが商品毎(バーコード毎)に小売業者に支払わなければならない費
陳列料
(単独の商品を固めて 陳列)
販促期間内に、サプライヤーが販促の陳列について小売業者に納付する費用
販売リベート 商品の販売額に基づいて、サプライヤーが小売業者に納付しなければならない一
定比率の費用
DMポスター費 サプライヤーの販促商品を小売業者のポスターに掲載するにあたり納付しなけれ
ばならない関連費用
新店賛助費 小売業者が店舗を解説するたびに、サプライヤーが納付しなければならない費用
販促員管理費 サプライヤーが売り場に販促員を派遣するに当たり人数によって小売業者に支
払う必要のある費用

さて、この通行料という概念はカルフールが中国に持ち込んだといわれています。通行料をサプライヤーから徴収することで、低コストで拡大していくことができました。そしてこれがどんどん浸透し、中国では当たり前に発生するものという共通認識となっていったのであります。

しかしこの通行料というコスト、サプライヤーにとってはなかなか負担の大きいものであります。北京のとある食品会社が某小売業者(確か物美だったような気がします)とトラぶったときのこと。この食品会社は2011年7月に契約を締結してから小売業者に対して入場料、バーコード料、新店開業費、契約料等々で128万元を支払ったのですが、2012年9月までの約1年の間の納品が113万元。つまり、これが全部売れて支払ってもらっとしても小売業者に対する支払額に満たないという笑えない話です。通行料は業界のスタンダードとはいえ、ここまでくると滑稽です。日本でも同じような費用はあるのですが、中国の通行料がことさら話題になるのは日本よりもその徴収体系がえぐいからなのでしょう。

そして、この通行料という商習慣に風穴を開けようとしているのがローソンです。なんとローソンは江蘇・浙江・上海地区に限ってではありますが、約1か月ほど前に入場料、口座開設費等を徴収しないと発表しました。一部地域限定とはいえ、かなりのインパクトです。これを実行するにあたってローソンもかなり準備をしたようです。およそ2年間の準備期間を経て、ようやく決めることのできたことであり、さしあたって江蘇・浙江・上海地区に限定しているのであります。

このような、通行料を徴収しない試みは以前にもありました。2003年に歩歩高という小売業者が入場料をなくしました。当初の計画では、このようなコストを引き下げることで、仕入れ価格を引き下げようとしたのですが、やっていうちに仕入れ価格が同業他社と変わらないことがわかりました。これだと入場料分の収入がなくなってしまうだけになってしまうので、半年ほどで入場料を取らない施策は取りやめとなってしまいました。

小売業者も以前ほどのパワーがなくなってきており、通行料収入を取りやめることも現実的には難しい状況にあります。最近ではウェアハウスタイプの小売店で通行料を徴収しないところも出てきているようで、通行料収入をアテにしている小売業者にとっては気が気ではないでしょう。

ローソンが通行料を地区限定とはいえ廃止してからおよそ1か月、歩歩高のようにほどなくして通行料が復活するのか、はたまた実施地区をさらに拡大していくのか。多くのサプライヤー、そして小売業者が注目しているはずです。このローソンの取り組みがきっかけで通行料という商習慣が変わってしまう、あるいはなくなってしまえば、これは業界にとっては大激震であることは間違いないですね!

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