2022-06-23

上海ロックダウンに対する各国企業のスタンス

JETROや商工倶楽部が上海のロックダウンの影響について調査を行ったのを並べて整理してみました。少し時期がずれていますが、おおよその傾向は見て取れるのではないかと思います。EU企業、米国企業、日本企業の順にみていきます。

1.EU企業(4月下旬調査)

  • 「物流・倉庫(面の影響)」、「出張の一時停止」、「オフライン会議の取消し」、「港の閉鎖」、「道路貨物輸送量の減少」、「海上運賃高騰」
  • 投資目的地としての中国の魅力が減退すると認識(78%)
  • 進行中もしくは計画中の中国での投資を、中国以外の国・地域へ移転することを検討(23%)
  • 対中投資からの振り替えを検討(2022年当初に比べて倍以上に増加)

2.中国米国商会

(1)4月下旬~5月初頭調査

  • 「自社事業は少し再開したが、サプライチェーンの混乱は大部分において継続している」(33%)
  • 「政策効果はなく進展はない、国内サプライチェーンの混乱による自社事業への影響は依然非常に大きい」(23%)
  • 「自社事業は一定程度再開し、サプライチェーンの状況にも改善がみられる」(20%)
  • 「操業を部分的に再開している場合、現段階における最大の課題は何か」との質問(複数回答)に対しては、50%(上海市に限定すると53%)が「サプライチェーンの混乱」を挙げた。続いて44%が「必要な従業員の不足」を、42%が「製造業の操業実態と市の新型コロナ予防抑制措置の間の矛盾した規制」を挙げた。「現時点において操業再開できていない」との回答も11%(上海市限定では15%)あった。

(2)6月7日~9日調査

  • 2022年の収益見通しについて、93%の企業が「下方修正」と回答した。
  • 上海市の封鎖管理の影響により、小売・サービス業の25%、製造業の20%が中国への投資を減少させると回答。
  • サプライチェーンについて、製造業の26%は、中国で消費される製品のサプライチェーンの現地化を進め、世界で販売する製品については生産拠点を海外に移転すると回答。
  • 製造業の23%は、上海市の封鎖管理は自社のサプライチェーン戦略に影響を与えていないと回答した。
  • 操業再開状況に関して、製造業は、「稼働率100%」(35%)、「稼働率75%以下」(25%)、「全く稼働していない」(3%)。
  • 小売・サービス業で「稼働率100%」は27%にとどまった。封鎖管理による上海市政府の経済支援措置に関して、既に申請し、支援を受けたと回答した企業は9%のみだった。申請を行っているが、待機状況にあるとの回答は19%だった。

3.上海日本商工倶楽部

(1)4月27~30日調査

  • 63%の工場が稼働しておらず、稼働3割以下の生産も合わせると9割に達する。
  • 操業回復により生産を取り戻そうとしている企業がほとんど。日本拠点、第三国拠点での代替生産は約3割。
  • 上海市に関連する国内物流は、8割前後の企業が全く手配できない又は必要量の3割以下しか手配できていない。
  • 70%の企業では、国際物流の手配が必要量の3割に満たない
  • 臨時帰国/避難を予定・検討する企業は、駐在員11%、帯同家族17%

(2)5月27~31日調査

  • 操業許可を取得し低生産にこぎつけた企業は8割超。
  • 上海市に関連する国内物流は、7割以上の企業が必要量の半分以下しか手配できていない。
  • 6割弱の企業では、国際物流の手配が必要量の半分以下。
  • 臨時帰国/避難を予定・検討および実施した企業は、駐在員16%、帯同家族22%。
  • 今後の駐在員数は変更なしが73%、減らす企業は6%。
  • 45%の企業が中国への投資姿勢は変更なし。9%が投資を減らす。

EU企業と米国企業については生産拠点の海外への移転について回答しているのが見受けられます。日本企業に関しては一時的に第三国への生産振り替えという回答がみられますが、中国への投資を減らすといううのが9%ある程度にすぎません。回答者の立場やミッションにより回答が違ってくるということと、やはり日本企業は欧米企業と違って地理的要因もあって中国生産の依存度が高く、生産拠点を他国に移転するのが考えにくいということなのではないかと思われます。

次に思ったのが、欧米企業には調査項目としてなかったのかもしれないですが、日本企業の回答には駐在員の臨時帰国・非難を検討する比率が4月下旬時点で11%、5月下旬で16%となってます。これは実施した比率ではなく検討した比率なので、かなり少ない数字と言えるでしょう。そして5月下旬の調査回答で、今後の駐在員数は変更なしが73%、減らす企業は6%という数値が示すように、当面中国から駐在員を減らそうとする企業は少数派といえます。まだまだ頑張ります!というのが上海における日系企業のスタンスと言えるでしょう。

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