2021-08-06

コロナ禍なんてなんのその、中国で日本料理店が増加中

ワタミの中国撤退のニュースが流れたのが去年の2月、時期的にコロナで騒ぎ始めた時期ですが、意思決定の期間まで考えるとコロナ前から撤退を考えていたのでしょう。同年4月には全店舗を閉鎖しました。ところがそのワタミが中国で最近再度出店を始めています。

あらためてワタミの中国での沿革を見て行きましょう。2005年に中国に進出し、上海、深圳などに出店。和民、響和民、内亭等のブランド名で出店し、2015年あたりがピークだったのが、2017年あたりになると他の日本料理店が増えてきたこともあってか、ライバル店が増えて来てその影響により店舗数が減少していくようになり、ついに2020年2月に中国撤退を発表したのであります。

こういう状況だったのですが、最近上海の北外灘エリアにオープンしたショッピングモール来福士に「唐揚天才」(日本だと「から揚げの天才」)がオープンしました。実はこれ、ワタミグループのお店です。中国飲食業界大手の国際天食集団(旧名「小南国」といえばわかる人も多いかと思います)がフランチャイズ権を取得して出店したものとのこと。力強いパートナーです。

中国市場を開拓しようとしているのは和民だけではありません。例えばゼンショーは今年の海外店舗は過去最高の388店舗、主要ブランドのすき屋はどんどん店舗を増やしていってます。なんでも、同社の利益の8割は海外市場がもたらしたそうです。今の日本の飲食業に対する締め付けを見る限り、海外市場を今まで以上に重視していく必要があるのは間違いないでしょう。そして距離的にも市場的にも中国は海外の中でも優先度が高くなります。実際に海外展開へ向かて準備を始めている企業もあります。

日経新聞が今年5月に行った調査によると、日本主要飲食上場企業100社の海外新規増加店舗は少なくとも730店に達し、これは2020年度に比べると2割以上の増加。また、日本フードサービス協会のデータによると、日本国内の飲食市場は2020年にマイナス15.1%、そして今もなお営業時間や酒類提供に制限がかけられている状況にあります。これに対して野村総研が発表したデータによると、中国の飲食市場は2020年には前年比マイナス17%となったものの、2021年の1-2月を見ると前年比7割増とかなり復活しています。

一方で中国のメディア報道を眺めていると、2015年の日本料理店の店舗数は中国全土で2.3万店舗だったのが、いまではこれがなんと8万店舗を突破しているとのこと。2017年に発表された《中国餐飲報告》において、日本料理は中国飲食市場の営業額ベースで第8位、市場占有率が4.5%、もちろん中華料理全体には大きく劣るのですが、中華料理をさらに細分化したとすると四川料理以外の中華料理よりも大きな地位を占めているのであります。なぜそんなに日本料理が増えてるのでしょうか?ヘルシー嗜好の中国人が増えたからなのか?日本に旅行に行った事のある中国人も相当多く、日本料理が身近な存在になったのか?などと思ったりしております。

中には客単価5000元に達する超高級日本料理店も出てきています。こんな超高級店に、若者が一人でやってきて写真も撮らず、かといってライブ中継をするわけでもなく(されたら迷惑かと思いますが)、一人でスマホ片手に黙々と食べ、そのまま帰ってしまうような人もいるようです。この現象についてよくわからないと紹介されてましたが、私にもよくわかりません。

まとめますと、とにかく日本料理店が増えているのは間違いありません。実際に街を歩いていても、ショッピングモールをうろうろしても、日本料理店がかなり増えているのが実感できるはずです。上海は以前から日本人が経営してたり経営に関わってたりする日本料理店が多く存在しており、味もサービスも日本と同じ感覚で美味しいお店も多数存在してるのですが、最近新しく見るお店はコテコテの日本!のような内装の「ザ・日本居酒屋」が多く、そのお店のオーナーはほとんどが中国人です。先日書いた記事「昭和感漂う日本料理店 in 中国」で紹介したお店のような感じです。

コロナで日本に行けないから日本料理屋で疑似日本体験をする、そういうニーズも確かにあるでしょうが、トレンドとして日本料理店が増えていますので、コロナがなかったとしても増えていたと思います。コロナさえなければ日本料理の市場規模はもっと大きく伸びて8000億元を超えていたのではという見方もあるようです。これから進出しようとする人には国際間移動が難しいさなかなので進めづらいと思いますが、今すでに中国国内で展開しているところにとっては今はいい時期といえるのではないでしょうか。

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